オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった
高価格で販売することで価格競争から脱し、コストも減り、利益を上げられるようになった酒造。
価格を上げ、利益を上げたフランス料理屋。
あえて田舎に店を出すことで競争のないブルーオーシャンを手に入れた江戸料理屋。
鮨屋なのにマグロがない、ウニがない、コハダがない、アナゴがない。
駅からタクシーで40分かかる鮨店。それでも常に予約がいっぱいだ。フランスの有名な3つ星レストランは遠いけれど、客がめがけてくる。
あえて価格を上げることで、値段で判断する客はこなくなった。強く支持してくれる100人のお客さんさえいればいい。
3つ星レストランに卸す農業を展開する農園は、野菜の提供先を高級レストランだけに絞った。いまや待っているレストランのリストは300軒もある。
わかる人だけにわかればいい。刺さる人だけに刺さればいい。いろいろな制限をつけてお客さんの数をどんどん減らし、最期は会員制にしてしまった天ぷら屋。
客が遅れてくるからと映画はスタート時間を遅らせない。料理を出す時間をそろえるために、スタート時間を守らせる天ぷら屋は店と客とのミスマッチをなくす努力をした。
ファンでもない人たちの声に耳を傾けない。
中途半端がいちばんよくない。
売り込まなくていい。
【潰れる店はお客様を選んでいない】
本田直之さんの著書「オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった」を読みました。
個人のホビーショップが潰れると耳にすることはあっても、新たにオープンするという話しを聞くことはありません。その原因は何でしょう。
どこでも売っている同じ商品をただ並べているだけ。個性がない。ウリがない。こだわりがない。そのこだわりを伝えていない。なにより付き合うお客様を選んでいないことが原因です。
【オリジナリティがあれば悪条件でも客は来る】
「オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった」には、圧倒的なオリジナリティをもつ和食・日本酒・鮨・フレンチ・農園のプロら15人のインタビューが掲載されています。
この本に登場する多くの店に共通することが「立地の悪さ」でした。どこもお店は東京の銀座や新宿駅前にありません。あえて秋田で開店したり、岡山駅からタクシーで40分もかかる住宅地の一軒家だったりするのです。それでも予約がいっぱいです。
立地がいいから客が集まる。儲かる。そんなことは決してありません。どんな場所でも客が来なければ売れないのです。もちろん、たまたま通りがかった、偶然みつけた。そうやってお店を知る、お客様になってもらえる可能性を否定しませんけれど。
しかし、ホビーのように趣味性のつよいものは「お客様がその店を目指してくる」くらいでなければ売れません。さいきん、わたしは思うことがあります。観光地の商店街ではなく、裏通りやビルの3階に店を出せばよかったな・・・と。
わたしの店は観光地・清水港のエスパルス商店街にあります。徒歩5分には映画館もある大型商業施設のエスパルスドリームプラザが存在します。富士山や三保の松原が世界遺産になったことも人が来る理由になっています。
そのため連休ともなれば、外国人の観光客が「両替できますか?」と飲食物を手にゾロゾロ店内に入ってきたり、18禁の張り紙を読まない暇つぶしの中高生が「いかに店員に声をかけられたら逃げるか」ばかり考えて入ってきます。とうぜんどちらも商品を買うことはありません。
強烈な個性(ウリ)があれば、明らかな冷やかしや暇つぶしを相手にせず、本当にあなたが付き合いたいお客様とだけ付き合うことができるのです。
【安売りせずに利益を確保する】
個人店は大手チェーンのように利益が多くありません。数もそれほど売れないので、定価で売らなければとても利益が残らないのです。利益が残らなければ家賃を払うどころか、商品を仕入れることもできず、潰れるしか道はありません。
利益を残すためにはどうしたらいいか。定価で売るしかありません。
品薄や人気で定価以上で売れるなら店で売らずにネットで売ってもいいでしょう。インターネットを使って定価以上で売る場合は、お店の名前や住所を出さず個人として売ることをおススメします。
オリジナリティには、店主が本当に付き合いたい客とだけ付き合うためにあえて価格を時価にしたり、値上げしたところがいくつもでてきます。なかには今までの倍にしたところもあります。利益をしっかり確保するから、お客様に喜ばれるサービスも提供できます。長時間働かなくてすみます。
なによりも定価で売れば、質の低い客が来なくなります。100円の原価のものを100円で売れ!もっと安くしろ!俺さえよければお前の店なんてどうなってもいい!とにかく無料!そんな人間をいくら相手にしてもクレームが増えるだけですよ。
安くしなければ買ってもらえない。安くしなければ売れない。そう思っている店主ほど、お客様に自分を売っていません。お客様に媚びています。お店とお客は対等なのに。
わたしは毎日、放送されているアニメを見ています。だから、お客様と最新のアニメや漫画の話を何時間だってすることができます。フィギュアや漫画、アニメなど趣味の話をしたいけれど職場や家族にいない。そんなお客様の相手を何時間だってすることができるのです。
もちろん、このサービスはわたしから商品を買ってくれる人にしかしません。安くほしい、実物をみたい、暇つぶし、買わない、そんな人はインターネット通販や大手チェーンに行ってもらいます。初めから店内に入れません。入れたくありません。
自分の美学を守り、お客様に媚びない。ブレないし売り込みもしない。買わない人間の評価を気にしない。オリジナリティがあれば、安くしなくても商品は売れるのです。
【やるのであれば徹底的にやる】
そこそこ商品があって、そこそこの店。つまり、そこそこ作戦。
これは潰れる個人店の特徴です。なぜなら「そこそこ作戦」は資金もあって人材もいる大手チェーンの戦法だから。
想像してください。マクドナルドと同じハンバーガーを個人店が出してお客様が感動する、喜ぶと思いますか。個人店なら価格はマックより高くても、サイズが大きく、味が良いものを作るべきです。
ホビーショップは問屋を通してメーカーから商品を仕入れるため、どこも同じ商品を扱うことになります。それでもオリジナルのグッズをつくる、独自のサービスをすることは可能です。間違っても大手やライバル店と価格で競争してはいけません。
【刺さるお客様にだけ刺さればいい】
オリジナリティに登場するプロフェッショナルに共通するのは「お客様を選んでいること」です。
誰でもいいから来てくれればいい。誰でもいいから来てください。間違ってもそのような姿勢ではありません。ホビーショップに限りませんが「とにかく誰か来てください」「すべての人がお客様」という店をみかけます。そんな店にかぎって「安くしなければ売れない」と口にします。
たとえばホビー。フィギュアが好きな人がプラモデルを好き、買うとはかぎりません。美少女フィギュアでも無可動のスケールモデルは好きで買うけれど、デフォルメタイプや可動タイプは嫌いではないけれど買わないなんて人はいくらでもいます。もちろんデフォルメタイプは買うけれど、可動タイプやスケールモデルを買わない人もいます。
だから、あなたはあなたの扱っている商品に刺さるお客様を選ばなければいけません。
あなたの扱う商品に刺さっていない人(買わないひと、欲しくないひと)を相手にすると、店に来てアニメや漫画の話で2時間も盛り上がって、いざ買ってもらえると思ったら「楽しかったです。また来ます」と、何も買わないで帰られることになります。
これは刺さっていないひとを相手にしたあなたの判断ミスです。売れないのは買わないひとのせいではありません。買わないひとを店に呼んでしまった、買わないのに相手にしてしまったあなたの責任なのです。
【まとめ】
安くすれば売れる。なるべく広いターゲットを相手にすれば売れる。たくさんの商品を仕入れれば誰かに刺さる・・・・。
すべて誤解です。間違った考え方です。強烈な個性、真似できない売り、オリジナリティのないショップが生き残ることはできません。
この本は開業してからより、開業前に読むことをおススメします。開業したらそう簡単に方向転換することはできないのですから。
オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった [ 本田直之 ](Amazon)