すごい古書店 変な図書館
井上理津子さんの「すごい古書店 変な図書館」を読みました。この本はおもに都内のすごい古書店85件と31の専門性の高い変な図書館がレポートされています。
さて、突然ですがあなたに質問です。あなたはある資格試験に挑戦しようと考えています。どんな勉強をしますか。
基本書を徹底的に読みますか。通信講座を受けますか。わたしなら過去問を5年分ほど解きます。そして間違えたところは正解するまで解きます。さらにどうして間違えたのか、基本書で学びます。
実は開業も資格試験も学ぶコツは同じ。資格試験なら、とにかくたくさんの過去に出題された問題を解く。
開業であれば、成功しているお店をできるかぎりたくさん見る、学ぶことなのです。
だって成功しているお店は生き残っているんですから。理屈でなく、結果を出しているのに参考にしないほうがどうかしています。
けれど、本業や副業で忙しいあなたが都内の100店舗を回るのは体力的にも時間的にも大変でしょう。そこで、この本の出番。あなたは自宅にいながら。会社の昼休みだとしても成功しているお店を追体験できるのです。
【目次は開業するためのヒントの山】
あなたが開業を目指しているのなら、まず目次にざっと目を通してください。そこは開業するためのヒントの山が並んでいます。
リアル店舗が成功するにはお客様に「そこが何屋か、店名を聞いただけでわかること」が基本です。○○薬局、○○書店、フィギュア天国、ミニカーショップ○○・・・のように。
この本の目次から一部の古書店の名前を挙げてみます。
・穂高書店
・ブックガレージ
・古本よみた屋
・古書 音羽館
・ほん吉
・軍学堂
・タナカホンヤ
・クラシコ書店
・かげろう文庫
・SO BOOKS
・古本案内所
・司書房
どうでしょう。これらの店名を耳にして「キン肉マンのフィギュアあるかな」なんて思う人はまずいません。いたとしたらおかしい人です。
店名は何屋かわかるよう、キーワードを入れる必要があります。古書店ならば「本」「ブックス」「書店」などですね。ホビーショップなら「フィギュア」「トレカ」「ミニカー」「モデルガン」「模型」「プラモデル」になります。
そして店名が読めること。覚えられること。誰かに伝えられることも重要。できるかぎり漢字、ひらがな、カタカナにします。英語(ローマ字)は可能なかぎり避けましょう。
店名で大切なことは、あなたがつけたい名前でなくお客様が読める、覚えられる、伝えられる、ことなのですから。
【お店の特長を25文字で語れるようになる】
この本は、1店舗あたり見開きの2ページで紹介されています。店名と場所のあとに25文字ほどのお店の紹介文が掲載されています。
たとえば、神田神保町の軍学堂さんは「戦争、軍事に関する本がなんと1万冊」と紹介されています。
店名も「軍」と「堂」で戦争や軍事に関するお店であることが伝わるうえ、特長も「戦争、軍事に関する本がなんと1万冊」ですよ。お店の紹介、個性を伝えるのに最高じゃないですか。
古書にかぎらず、中途半端な「何でも屋」ほど個性のない店はありません。誰にでも好かれようとして誰にも好かれない店のできあがり。
あなたのお店に25文字以内に説明できる特長や個性がないとしたら、まず100%開業は失敗すると考えてください。
【店は客に選ばれ、同時に客を選ぶ】
とある超高級本をあつかうお店は、店のドアに鍵をかけてブザーで店員を呼び出して開けてもらいます。この店にかぎりませんが、客が店を選ぶと同時に店も客を選んでいます。
車のカタログや自動車雑誌だけを扱うお店。レア本だけ並べるお店。ミステリー小説だけ並べるお店。どこも商品を絞ると同時に、お客様を絞っています。選んでいます。
店売りだけで経営を維持するためにネットで売らず、その分「安く売る」店もあります。売り方は人それぞれ。戦略を考えたうえでの安売りならアリなのです。
古書店に限りませんが、ホビーショップも本来なら「間口が狭くて奥が深い」商売であることを忘れないでください。
【まとめ】
この本で紹介される古書店や図書館のほとんどが個性的でした。逆に何でも屋はありません。この意味がわかる人は開業でも失敗しない人なのでしょう。
何でも扱う。何でもある。そんな金と場所をとる戦い方は大手チェーンに任せておけばいい。
この本は、開業を夢見る人、いま開業している人にそう思わせてくれる一冊です。いつかホビーショップでも出版されることを期待しています。