個人店はホビーショップやおもちゃ屋と名乗らない
ショッピングセンターの経営が曲がり角を迎えています。新規の施設開業は堅調ながら、古くからある施設からのテナント退店が止まりません。国内ショッピングセンターでは、テナントの新規出店がこの1年で3割減り、退店が出店を上回りはじめています。古いテナントが出ていくけれど、次に新しく入るテナントが入らず、歯抜け状態が目立ってきました。
むかし、大型チェーンのおもちゃ屋がありました。たとえば、バ○バ○、ハ○ー○ック、○ルトミ、こぐ○・・・。今はもう行くことも買うこともできません。
最近では2017年9月にアメリカのトイザラスが連邦破産法の適用を申請しました。現代は店に行かなくても、インターネット通販で誰でも安く、送料無料で同じ製品を買うことができます。大手チェーンのおもちゃ屋でコレです。あなたの周囲に個人のおもちゃ屋が開店することは、将来的にまずないでしょう。
個人店が今から「おもちゃ屋」「ホビーショップ」を開業するのがどれだけ大変な道か、わかってもらえるでしょうか。
【おもちゃ屋、ホビーショップから連想するお店の姿】
あなたに質問です。おもちゃ屋、ホビーショップと聞いて、どんな店を想像しますか。
わたしが想像するおもちゃ屋といえば、広い店内にミニカー、プラモデル、ウルトラマン、仮面ライダー、リカちゃん、ぬいぐるみ、ゲーム本体・ソフト、トレカ、リモコン、ミニ四駆などが並んでいるところ。ホビーショップなら、おもちゃ屋ほど広くない店内に中高生以上の大人を相手にしたプラモデル、フィギュア、モデルガン、ラジコンが並ぶお店といったところでしょうか。
おもちゃ屋、ホビーショップ、このどちらにも共通することがあります。それは「何でも屋」のイメージ。
どちらの肩書きを耳にしても「コレ!」という商品が浮かびません。または「○○なら置いてあるのではないか」といった、お客様各自の勝手なイメージが想像されてしまいます。
人は自分に都合よく解釈します。おもちゃ屋、ホビーショップと聞いた人によって「○○がありそうだ」「○○があるだろう」と考えてしまいます。そして、期待を膨らませてあなたの店に来たお客様の多くがガッカリして帰ることになります。
期待を裏切られたお客様があなたの店にふたたび来ることはありません。
【おもちゃ屋、ホビーショップと名乗るデメリット】
まず、おもちゃ屋、ホビーショップと名乗る店側のデメリットを挙げます。
・たくさんの商品(種類)を仕入れなければならない
・たくさんの商品を並べる店舗面積が必要になる
・すべてのお客様の期待に応えようとするが、その期待に応えることができない
・売れない
・買わない人間ばかりやってくる
あなたが大金持ちで財力があり、面積の広い店とたくさんの商品を仕入れられるのなら何もいいません。好きにやってください。でもね、そうでなければすべてのお客様に応えるなんてことは個人では無理。大手チェーンでさえ潰れていることがその証拠です。
お客様は自分の好き勝手に妄想を膨らませてやってきます。その妄想に100%応えることのできる個人店なんてありません。存在できません。
わたしは、おもちゃ屋・ホビーショップを飲食店に例えるのであれば「定食屋」「ファミリーレストラン」だと思います。ラーメンもカレーも丼もソバもステーキも提供するけれど、どれも味が標準、または標準以下。
何ひとつとして「売り」や「特長」がありません。
ラーメン屋なら「味噌ラーメンなら地域一番!」とやればいいのに、うちは醤油も豚骨も塩もカレーも野菜ラーメンもあるし、美味しいよ!とやってしまう。食べてみると、どれも味がイマイチ。何でも屋であろうとした結果がコレです。
そんなお店に個性は生まれません。クチコミもされません。話題にもなりません。そしてお客様も来ません。飲食店なら一度は食べてくれるけれど、リピーターにはならないでしょう。
まず商品を一つに決め、その一つを極めることが重要です。おもちゃ屋、ホビーショップと名乗るメリットは現代にはないことを知ってください。
【肩書きと店名でお客様を絞る必要性】
わたしは美少女フィギュア専門店の限定市場を経営しています。清水区は港町のためか、たまに外国のお客様がやってきます。
彼らは一通り店内を見たあとスマートフォンやタブレットの画像を見せ、わたしに質問します。
・抱き枕アリマセンカ?
・アニメの洋服を売ッテマセンカ?
・アニメのポスター売ッテマセンカ?
えっと・・・ここ美少女フィギュア専門店なんですけど(汗)。わたしは彼らに答えます。「ガールズフィギュア・オンリーショップ」と。
それでも何とかして自分が探しているアニメグッズを手に入れようと、彼らは粘ります。「どこかに売っているところはないか」「何とかして買えないか」と。何十分とカタコトの言葉で相手をして、売っていそうな店までの地図を書いても、わたしの店で彼らが買うことはありません。
つまり、肩書きや店名でお客様を絞らないと売上につながらない人間ばかり来てしまう結果になります。もちろん外国人でなく、日本人でも「買わないけれど話相手になってくれそうな店主がいる店」として都合のいい場所あつかいされる危険性も捨てきれません。
【まとめ】
では、どうすればいいか。総合的で誤解されそうな肩書きはつけないのが一番です。
おもちゃ屋、ホビーショップではなく、プラモ屋、カードショップ、美少女フィギュア専門店、ミニカー、モデルガン、デフォルメグッズ専門店のように商品を何か一つに絞りましょう。
肩書きを聞いただけで、お客様が「あ、俺には関係のない店だ」と思ってもらえるのが理想です。
すべてのお客様に応えようとして応えられないなら、すべてのお客様を相手にしようとするのをやめればいい。ガンプラに自信があるなら、ガンプラを求めるお客様だけ集めればいい。ガッカリされることも、文句を言われることもなくなります。
ひとつ誤解してほしくないことがあります。
お店では何も一つの商品を扱えってことではありません。中にはインターネット通販を使えない、使いたくないお客様もいます。あなたの店で扱っていない商品でも、常連さんの完全前金制での予約や取り寄せは受けましょう。お互いにメリットがあります。
気をつけたいのは、あなたのお店が「買わなくても居座れる」「時間がつぶせる」「都合のいい場所」になりさがることです。それだけは絶対に避けてください。