商売の心得は「三方良し」
【商売人の心得「三方良し」とは】
ここまでは「売ることが大切」「利益をいただこう」といった商売をする以上、避けられないお金の話を取り上げてきました。
ここからは「気持ち」「心」といった商売人としての心得を説明します。
三方良し(さんぽうよし)は、商いの基本。
売り手よし
買い手よし
世間よし
売り手と買い手だけが儲かる商いではなく、周りの人も良くなるのがよい商いということ。
売れた店の人は儲かり、買ったお客様は喜ぶ。あなたの店があることで、近所の人が喜ぶ。助かる。潤う。感謝する。
ホビーショップに限りませんが、商売をするのであればこの考え方を忘れてはいけません。
【Win-Winであれ】
Win-Win(ウィンウィン)という考え方があります。売り手と買い手、どちらも勝者であること。双方が嬉しい、喜んでいる状態です。
売り手であるアナタは「わたしから買ってくれてありがとう」。買い手であるお客様は「わたしに売ってくれてありがとう」とお互いが感謝する。
Win-Winは商売の理想です。
どちらかが泣いたり、どちらかが得をする、片方だけが我慢をするのは商売ではありません。
わたしの店にも、会話を目的で来店される方がいます。
こちらはお客様と考えて一生懸命に接客します。一時間以上もアニメの話や世間話に付き合い、ようやく商品を買ってもらえると思ったら「楽しかったです。また来ます」と何も買わずに帰られてしまいます。
そして、その人は本当にまた来ます。わたしとの会話を楽しむために。もちろん、今度も商品は買ってもらえません。
わたしは画像のように心の中で泣いています。「この話にあとどれだけ付き合ったら、商品を買ってくれますか?」と聞きたくなったことは一度や二度ではありません。
お客様は楽しいかもしれませんが、こちらは仕事の時間をつかって相手をしています。その時間は返ってきません。
こうして、わたしには「また何時間も相手をしたのに売れなかった」という徒労感が蓄積されるのです。
このような状態は、決してWin-Winではありません。
【お客様に喜んでいただいて、おひねりをいただこう】
芸人は優れた芸をお客様に見せて「おひねり(代金)」をいただきます。
わたしたち商売人も芸人と変わりません。お客様の喜ぶ、探している、欲しがる商品やサービスを提供し、そのお礼として代金をいただくのです。
その気持ちを忘れなければ「この商品、○○様がきっと喜んでくださる」「あ、この商品は○○さんが探していたっけ」と、仕入れ時にお客様の顔が浮かぶようになります。
わたしの場合、この勘がはずれることはほとんどありません。
【お金を払う文化のない人もいる】
商売をする上で覚えておいてほしいことがあります。
それは「何をしても買わない人はいる」ということ。
あなたがどれだけ一生懸命に接客をしても。何時間、世間話につきあっても買わない人は必ずいます。お金を払う文化のない人ともいえますが、怖いのは「なんでも無料で手に入れようとする人」です。
たとえば、会話という行為。楽しい時間を過ごす、情報交換といった側面もありますが、相手の時間を奪う行為でもあります。
いろいろな人がやってくるお店という場。残念ながら、お客様の顔をして「あなたから何かを無料でもらおう」「あなたから大切な時間を奪おう」とする人が存在することを忘れないでください。
【すべての人に好かれようとしない】
商売人は基本、人を嫌ってはいけません。もちろん、アナタからは・・・です。
あなたがどんなに頑張っても、あなたが嫌っていなくても相手が嫌うことはよくあること。気にすることはありませんし、無理して嫌いな人に好かれようとする必要もありません。
ましてや、お店であれば迷惑客は切ることも必要です。すべての人に好かれようと考えない。あなたから嫌わなければヨシと考えましょう。
【商売人は感情を一定に保つ努力をする】
会社にいませんか。昨日は機嫌がよかったのに、今日は機嫌が悪い。感情が常に顔にでてしまっている。もしくはサービス業の店員なのにニッコリともしない。あいさつをしない。そんな人。
お客様は、あなたの鏡。
あなたが無愛想、憂鬱、暗さ、悲観をもたらせば、お客様も無愛想、憂鬱、暗さ、悲観で反応します。もちろん商品を買うこともありません。
逆にあなたが愛嬌、喜び、明るさ、熱意、笑いをお客様にもたらせば、お客様も愛嬌、喜び、明るさ、熱意、笑いで応えてくれます。結果、商品が売れ、あなたには売上げがもたらされるでしょう。
お客様はあなたの鏡という考え方ですが「嫌な客ばかり来るのはあなたが嫌な客を引き寄せている」とも考えられます。
人生は思い通り! マンガでわかる「引き寄せ」の法則でも、4年も交際している彼がなかなか結婚してくれないと悩む女性が登場します。けれど、彼と結婚したいはずの女性が本心では「彼は結婚する気がないんじゃないか」と思っていて、それが現実になっています。
「うちの店には嫌な客ばかり来る」と考えていると、本当に嫌な客ばかり集まるので注意が必要です。
少し脱線しました。あなたの家庭やお店の事情はお客様には関係ありません。たとえ悲しいことがあっても、お店ではいつもの様子でいるよう努力してください。
【意識して、ピンクのエネルギーを出そう】
一緒にいて楽しい人のところには人が集まります。逆にいつもムっとして不機嫌な人には人が集まりません。
これはお店も同じ。店主であるあなたが不機嫌な顔をしていれば、お客様も寄り付きません。
まんがで叶える 引き寄せの法則によれば、目標をかなえているひと、幸せな人にはピンクのエネルギーが出ているといいます。対して、何もかもうまく行かないひとからはグレーのエネルギーが出ているそうです。
商売人ならば、意識してピンクのエネルギーを出しましょう。
ピンクのエネルギーを出すのは簡単。たとえ心から笑うことができなくても、口角をあげてニコっと笑うこと。
誰だって、お店に入って「こんにちは!」と明るい笑顔であいさつされて嫌な気持ちにはなりませんよね。
【お客様は神様です!の誤解】
歌手の故・三波春夫さんが言って有名になった台詞。それが「お客様は神様」です。
三波さんの場合、コンサート会場にお金を払って来てくれたお客様に対して発しています。つまり、お金を払ってきてくれた人に対して感謝を伝えたのです。
ホビーショップの場合、商品やサービスを買ってくれる人がお客様です。
ただし、いくら買ってくれる人でも他のお客様に迷惑をかけたり、理不尽なクレームばかりつけてくる人を放置してはいけません。
迷惑な客を放置しておくと、お店の雰囲気が悪くなります。同じような迷惑客が増えます。店の周辺にゴミを捨てたり、近隣にも迷惑をかけます。迷惑客のクレーム相手をしなければならない従業員の顔が暗くなります。従業員が辞めてしまいます。店の雰囲気が悪くなると上客が店に寄りつかなくなり売上が下がります。
迷惑客はときには注意し、ときには出入り禁止にすることも必要です。それがお店を応援してくださるお客様のためにもなります。
それが売り手よし、買い手よし、世間よし、につながります。
【廃業のタイミングも考えておく】
物事には始まりがあれば終わりがあります。あなたがホビーショップを開業するときは、いつ辞めるかも考えておきましょう。
「3年しても赤字が解消できなければ辞める」といった具体的なものから、気力が続かなくなったとき、重い荷物が運べなくなったとき、のような抽象的なものでもかまいません。
個人的には好きなことや趣味を仕事にしたのだから、お客様のいるかぎり最後まで、せめて体が動かなくなるまで続けてほしいと思います。