宇佐美人形店 静岡県静岡市清水区銀座14番10号
わたしが住む静岡県静岡市清水区には銀座と呼ばれる商店街が二つあります。
JR清水駅からアーケードになっている駅前銀座。そして駅前銀座を歩いているとアーケードの屋根がなくなり、自動車が一方通行で走行できる清水銀座です。
その清水銀座に創業101周年をむかえた県下最大級・ひな人形の「宇佐美人形店(うさみにんぎょうてん)」さんがあります。
たまたま三代目とツイッターで知り合うことができ、その日のうちにダイレクトメールで連絡をとり取材をさせていただくことができました。
これは100年という長い歴史と実績を誇る老舗の貴重なレポートです。
【開業した年と、開業のきっかけを教えてください】
1916年に初代となる祖父が開業しました。わたしは孫で三代目になります。最初の店舗は島崎町で開業しましたが、1935年に現在の場所に移転しました。
もともと静岡県は家具の産地で、久能山東照宮を建てるために全国から腕のいい職人がたくさん集まってきました。ひな人形をよくみてください。人形本体だけでなく、屏風や台、ぼんぼりなどの小物があります。これはいわばミニチュアの家具なのです。
祖父がひな人形の製造を習い、真面目であること、腕がよいことから自分の店をもつことになりました。うちは製造メーカー、卸、小売りの川上から川下までやっていたこともあります。現在は小売りだけやっています。
祖父がはじめたため、詳しい開業資金などはわかりません。場所選びも生まれた時から最初からありましたし。店名も苗字そのままです。
【開業前は何をしていましたか】
子どもの頃からずっと店を継ぐものと思っていましたが、一時店がいろいろな煽りをうけ経営が難しくなりました。そこで、わたしは3年ほど金融機関に勤めていたことがあります。
すると店の経営が上向き、父親がお前も店を手伝え!と迎えにきました(笑)
【仕入について】
もともと自分で製造もしていましたし、職人さんとのつながりもあります。現在はそのつながりを生かして仕入れています。
ひな人形は顔、体、飾り台、道具などの小物、すべて別の職人さんが作っているため、組合せはいくらでもできます。
ひな人形の売価は、職人の値段で決まります。
【定休日と営業時間の決め方を教えてください】
商店街が水曜日を休みます。うちもそれにあわせています。営業時間は10〜18時と閉店時間が少し早い気もしますが、連絡をいただければあけて待つことも可能です。
【商品の売れる時期がありますか】
ひな人形は年末年始(1・2・3月)が一年でいちばん売れます。五月人形は3・4月です。
実は・・・うちは花火で注目されています。コンビニなどで花火のセットは売られていますが、同じものを大量に買えるのは静岡・富士・藤枝付近あたりでは当店だけでしょう。
子供会などから大量に注文をいただくこともあります。7・8月の夏は店内がお客様でごったがえして行列ができることもありますよ。
【顧客ターゲットを教えてください】
ひな人形はお子さんの両親、そして両家の祖父母。とくに母方の両親になります。父方の祖父母には雛まつりを迎えるための市松人形がよく売れます。
【集客・宣伝方法を教えてください】
チラシ、タウン誌への広告、ダイレクトメール、銀行などの取引先からの紹介があります。
わたしの代になってからインターネットを活用することにしました。ツイッターをはじめ、ホームページも作りました。ユーチューブで動画もアップしています。
わたしはもともとアナログな営業活動が得意で、2000年までは地域での売上げもダントツでした。昔は出生児のデータが手に入りましたから、赤ちゃんの生まれた家と実家の両方に営業をかけ、ある年では3000万売り上げたこともあります。まあ現在はプライバシーの問題があり、それもできなくなりましたけれど。
【うちはこれが一番!を教えてください】
良いものを扱うこと。これに尽きます。
近くにお住まいのお客様ならお届けから飾りまでやります。仕舞い方もお教えします。おかげさまでクレームもゼロです。
よくインターネット通販で安く売られているひな人形をみかけますが、安いなりの完成度です。座りがよくないというか、着物が浮いているなど、全体のまとまりもよくありません。とうぜん安くすませるためにボンドで張り付けたりしています。
なによりインターネットの画像と実物は微妙に異なります。色が思っていたものと違う、顔が異なる、などです。ネット通販では、数パーセントのクレームが発生しているそうです。
当店では、お客様に納得して選んでいただくために質の良いものとそうでないものを比べてお見せして説明することもあります。
【仕入で心がけていることを教えてください】
自分が欲しいものを売る。
【接客方法について教えてください】
ゆっくり選んでいただきます。しつこくしません。良いものを理解してもらうためにアドバイスをします。
【開業に必要なものは何ですか】
まずメンタルが重要です。プラスに考えること。あと待っているだけではダメ。
たとえば清水銀座商店街には店を辞めたいと考えている人もいます。けれど、わたしは店があればベース(基地)になると考えます。ショールームとして、撮影ブースとして、通販の場所として、プラスに考えます。なによりリアル店舗が存在することは、インターネット通販では信用につながります。
さいごに変化に対応すること。時代は変わります。去年まで売れていたものが今年も売れるとは限らない時代なのですから。
【えこひいきはしていますか】
しています。一見さんには何もサービスをしませんが、購入してくれた方には割引券を差し上げています。
【夢や目標を教えてください】
eコマースの世界に力を入れたいです。ひな人形を世界に販売してみたいですね。
【困ったお客様はいますか、来店したことはありますか】
いきなり商品を触られるのは困りますね。手袋などもありますので、まず声をかけてください。
あと夏祭りの時など、アイスやジュースなどを飲食しながらの入店も困ります。床などにこぼれると汚れるし、滑ってしまいますから。
【開業したい人に向けてアドバイスをお願いします】
扱う商品が好きであることが大事です。好きだから、楽しいから商売は続けることができます。
あとは商品やお客様を大事にすること。
【まとめ】
ひな人形といっても、わたしを含む一般人は本当に知らないことばかり。
ひな人形は顔と本体(ボディ)、小物を作っている職人さんが別なこと。十二単の着物の本体を作るためには半年間もかかること。人形の顔は木やプラスチックでなく、何かの粉を固めてものであること、など。
そもそも、なぜひな人形が存在するのか。なぜ親が娘のために買うのか。知らない人も多いと思います。せっかくプロが情報発信をするのです。宇佐美人形店さんにはぜひ、ひな人形の生い立ちから取り扱い方法、失敗しない選び方、手入れ方法、などをホームページやブログで発信していただきたいと思います。
商品知識は十分。店の歴史もあります。これからはインターネットの世界に役立つ知識を発信していってください。
【ひな人形店 宇佐美人形店 基本情報】
所在地 静岡県静岡市清水区銀座14番10号
電話番号 054-366-1006
定休日 水曜日
営業時間 10-18時
駐車場 清水銀座路上P無料。店の裏に無料駐車場5台あり
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