新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには
一時は古本屋を二店舗経営していたカラス店長さん、秋田県の鉄道模型店 元城模型のとみぞう店長さんからおススメされた「新宿駅最後の小さなお店ベルク」を読みました。
ベルクは業種が飲食店であること、新宿駅という一等地に店があること、親の店を継いだことなど、個人のホビーショップとは開業の条件がかなり異なっています。
しかし商売の基本はそれほど変わりません。この本で、個人店の戦い方、ライバルとの差別化、哲学の大切さなどをあなたも学んでください。
【飲食店とホビーショップの大きな違い】
まず飲食店とホビーショップの大きな違いを挙げておきます。
>>飲食店
・店に客が入れば売上が発生する(注文せずに居座ることができない)
・独自のメニューで、店の特徴や個性が出しやすい(チェーン店は除く)
・原価率は25〜30%(店によって変動あり)
>>ホビーショップ
・店に客が入って何時間居座っても、売り上げゼロの可能性がある
・商品で個性を出すことは難しい(同じ商品が他店でも売っている)
・原価率は70〜80%
飲食店には食材の廃棄ロスがありますが、ホビーショップでも値引き・値下げ・万引き(内引き)ロスが存在します。なので、ロス率についてここではとりあげません。
またホビーの場合、食玩に入っているオマケのガムをのぞいて腐りません。ゴムや素材、デカールの劣化はありますけれど。人気があるのに再販されなかったり、発売されてから年月が経過すると価値がでる商品も存在します。
【個人店だからこそできること】
個人店は蟻です。象である大手チェーンに真正面から対抗しても勝てません。とくにホビーはインターネットでも売られているので、値段で戦うことはできません。ただでさえ利益が少ないのに、値段で戦ってはいけません。
では何で大手と戦うか。それが「こだわり」であり「ポリシー(哲学)」、「接客」です。
インターネットやライバル店で同じ商品が売られています。なのに時間とお金を使って、わざわざあなたの店に来て買ってくれるお客様がいます。そんなお客様を増やし、リピートしてもらうのです。
個人店は「わざわざ客」を増やさなければいけません。
【自分が欲しいものを売る】
ベルクの商品開発は、商品開発のキーワードに「自分たちが毎日食べられるもの」があります。自分が食べない、食べられないものを売っても客の心に響くことはないからでしょう。
美少女フィギュア専門店・限定市場の仕入基準に「自分が欲しいもの」「売るのが惜しくなるもの」があります。ほかにも「売れ残っても後悔しないもの」「常連さんが喜びそうなもの」「常連さんが買ってくれそうなもの」も仕入れています。
どんなに仕入れ値が安くても、完成度が微妙な商品は売れずに残ります。完成度が低い商品を安いから・・・という理由で仕入れると、たいてい在庫になるのです。
【客に選ばれる店になること】
商売で利益が発生するときは、お客様から代金をいただいた時のみ。お客様に選ばれる店にならなければ生き残ることはできません。
そのために大手では真似できない魅力ある店づくりをする必要があります。
【POPについて】
飲食店のベルクでもPOPのでき映えが、商品の出る数を。店の命運を左右しています。これはホビーショップも同じ。
POPが増えると品がないという意見もあるそうですが、POPを外せば外すほど客数が落ちるとのこと。品をとるか、客をとるか。個人店が選ぶのは客しかありません。
【売ることに積極的であれ】
ゼロからスタートする無名の個人店。上品に、ただ待っているだけでは売れません。ベルクだって呼び込みやチカチカ点滅するライトで目立つ努力をしています。
ただ良い商品を並べれば黙っていても客が集まる、売れると勘違いしている人がホビーショップにもいます。一等地にあるベルクでさえ売ることに積極的なことを忘れてはいけません。
【契約について】
事業計画書の作成、店舗の契約の大切さについても書かれています。しっかり契約書を読んで契約しなければ、ある日とつぜん「出てけ!」と言われても従うしかありません。
【まとめ】
早い
安い
うまい
飲食店ならば可能な三拍子ですが、ホビーショップでの実行は難しいと感じます。
それでも成功している店から学べること、真似できることは真似しましょう。哲学、接客、こだわり、考え方、従業員の育て方、契約の大切さ。開業からは避けて通れないのですから。